集会長挨拶
第22回日本母子看護学会学術集会 集会長 松永 佳子
挨拶
第22回日本母子看護学会学術集会を2023年8月5日(土)に東京慈恵会医科大学国領キャンパスで開催することとなりました。
2020年、本学会の節目の年に新型コロナウイルス感染症が世界的な広がりをみせ、その後現在に至るまで、8回の「波」が押し寄せています。この間、検査方法やワクチン、そして治療薬の開発と医療が大きく進歩したように思います。
しかし、女性を取り巻く環境は進歩できずに、むしろ課題が山積しているように思います。2020年は若い女性の自殺率が上昇しました。DVも増加したと報じられました。これまで以上に孤立した子育てを強いられています。そして、2022年の出生数は80万人を下回りました。
出生数の減少の要因の1つに、妊孕性に関する知識が世界と比べて低いことが指摘されています。出生数は減少する一方で、不妊を心配するカップルは実に3組に1組、実際に治療をするカップルは5組に1組と言われています。日本では子どもを生み育てる権利、リプロダクティブ・ヘルス/ライツが脅かされているように感じます。自身の身体に向き合い将来の健康を考える、生殖に関するライフプランを描き間違えないような情報提供、必要であれば助産師や産婦人科医につなげられるようなシステムが必要ではないかと感じています。
そこで、第22回日本母子看護学会学術集会は、「つながろう、未来をになう若者のために」をテーマとしました。
特別講演では、「女性の生涯を見据えたプレコンセンプションケア」について、2019年よりプレコンセンプションケアの普及活動を精力的にされている西岡笑子先生に、「行政から支援を受けられない妊婦への支援」について臨床の現場で出会う現実を産婦人科医の鮫島浩二先生に、ご講演いただきます。
教育講演はオンディマンドを含めて4講演を準備しました。「計画外妊娠への支援」について日本でいち早く「妊娠SOS」の活動を始めた土屋真由美氏に、そして「若者の人工妊娠中絶と向き合って」について産婦人科医の松峯寿美先生に、その現状を踏まえてご講演いただきます。オンディマンド配信では、*CLoCMiP®必須研修である「女性に対する暴力予防の支援」について日本でフォレンジック看護の活動をされている吉家望み氏に、「ウィメンズヘルスケア提供のための基盤能力」については、地域、企業と連携して広く女性を支えている岡本登美子氏に、「多様な性への支援」については、性に関する研究を長年され本学会の理事長でもある齋藤益子先生と、当事者である虎井まさ衛氏にご講演いただきます。
シンポジウムは「若者を支えるためにどのようにつながるか」をテーマに、摂食障害の子どもたちに他職種で関わり治療をされている小児科医の大谷良子先生、インターネットを介して悩める子どもたちに情報発信している助産師の古川直子氏、そして薬局において「まちの保健室」を行っている薬剤師の坂口眞弓氏に話題提供していただきます。つながるためにどのような実践をされているのか、具体的なお話を伺うことができると思います。
これらを通して、助産師として我々にできることは何かを考え、行動につながるきっかけとなれば学術集会は成功であると思っています。
今回は、3年ぶりに対面での開催となります。仲間と学び合う、語り合う機会となると思います。多くの方のご参加をお待ちしています。
最後に、本大会の開催に際し、企画委員をはじめ多くのみなさまのご支援、ご協力を賜りましたことに心より感謝申し上げます。
松永 佳子